その魅力を解剖!半沢直樹は“今の男たちを奮い立たすこと”ができるのか?

約7年ぶりに再開しスタートしたTBS系の社会派ドラマ『半沢直樹』が、今高視聴率で注目されている。登場するキャストたちの言動や立ち回りがネットを騒がせ続けている。これは国民的ドラマと言えるだろう。

しかし、このような人気ドラマを、現役の銀行員はどのように捉えているのだろうか? 

今回は、池井戸潤の人気小説をドラマ化した『半沢直樹』シリーズを、現役銀行員ならではの鋭い目線で、その魅力とストーリーの背景にある銀行員のリアルというものを読み解いてみた。

半沢直樹が伝えたいその想いとは?

銀行員が、毎回楽しみにしているというドラマ『半沢直樹』。現役銀行員から見て、半沢の活躍というのは、どのように見えているのか?

銀行員・田中さん(仮名/50代)「『半沢直樹』というドラマの魅力は、バブルを生き抜いた世代の強い想いがあることだと思いますね。原作を執筆した池井戸潤氏も、年齢的にバブル世代になります。元々の原作シリーズタイトルは『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』。私も、《バブル組》なので、気持ちがわかるんですよね。バブル期には、株価や地価が高騰して、札びらでタクシーを止めたり、ディスコのVIPルームでシャンパンを開けたり、勢いのあった時代です。何を出しても売れる、企業戦士が活躍する、それが1987年以降です。こんな強烈な金を稼ぐサラリーマンイメージに僕らは夢中になりました。しかし、実際にサラリーマンになってみると、そんな感じでもなかったな、と。逆にバブル熱で膨れ上がった日本の大企業に、圧迫感や脅威を感じていましたね。年功序列や終身雇用が保証されていた組織の中で、若くして入社した会社員の思想は、抑制されます

若手社員の鬱屈がたまって当たり前だが、この時代はまさに年長者が仕切る社内だったわけだ。

田中さん「個人の個性が殺される中で、上司の思いを汲み、日々雑務のような仕事をやらせれる。自分自身の企画やアイデアなんていうのは、実現させることができないと思い知らされ、上司の顔色をいつも伺いながら、ずっと走り続ける。しかしながら、逆にどこかに冷静に傍観していて、年功序列という制度を一旦壊さないと新たなビジネススタイルが生まれることがなく、この組織に将来が見込めないということにも、気づく。そんな時代ですね」

反抗勢力と窓際に追いやられる人々

田中さん「バブル頃の若手会社員時代、みんなこうした感覚はあったように思いますよ。簡単にいえば、現組織と上司への反発心ですね。《倍返しだ!》と叫ぶ半沢直樹のセリフも、一般的な常識とはかけ離れた自分の出世のみしか考えていない上司や組織自体に向けられた言葉だと思います。高度成長期には、アメリカなどの各国に追いつこうと、白物家電で日本製品が世界中を席巻。やったと思える時代が続いたわけです」

当たり前だと思っていた時代が続く高度経済成長期。バブル世代の彼らには何が起こったのか?

田中さん「高度経済成長期は、欧米で開発された製品を改善、高い品質の製品にすれば《絶対に勝てるゲーム》展開だったので、長期的な研究開発でも《年功序列》や《終身雇用》という制度は保てました。しかし、1973年に起こったオイルショックで高度経済成長期は終わってしまいます。この時代のバブル世代というのは、小学生くらいの年齢でしょう。この頃になると、中高年会社員が《窓際族》に追いやられてしまうという風に、新聞にチラホラ記載されきた時代です

年功序列や終身雇用制度の崩壊が起こったのが、1980年前半であった。

“なるのであれば、鰯の頭よりもタイの尻尾”という時代が終焉を迎え、年功序列や終身雇用などの日本の大企業なシステムが、機能できなくなってきていたのだ。さらに「どうも大企業の会社員になったとしても、希望を持つことができないぞ」ということに、バブル世代は感じ取りはじめたわけだ。

今まで感じ取っていた新たな発想や技術が、会社の中で活かすことができないを思い知らされていたバブル世代は、上司の役立たずさや組織自体の矛盾に直面してしまい、激怒していたのだ。

しかし、皮肉なことにバブル世代は現在年功序列や終身雇用制にしがみつき、抵抗勢力のようになってしまっている。

ヒドい事態に直面し続けたバブル世代

前回の半沢直樹では、笑福亭鶴瓶演じる半沢直樹の父が「ロボットのような仕事はしたらあかん」と口を酸っぱくして言っていた。

顧客の役に立てるような仕事をするためには、上司の顔色を伺いながら、マニュアルに頼りながら、自分自身が本来持つセンスをなくし、ロボットが動き回るような組織のひとつのネジになる。そのようなバブル世代の大企業に勤める会社員の姿を示したセリフ。

銀行に勤めるバブル世代は、厳しい時代の変化に直面し続けた。不良債権と再編の渦。さらにリストラ、ポストの絞り込み。バブルの入行組というのは、同期1000人というのは当たり前。このような環境で出世の競争を行うのは非常に厳しいわけだ。

さらに、グローバル化やWeb普及でデジタル化が進み、取り残されれば、その時点で終わる。ある人脈は、社内のみでしか通用はしない外部には通用しない知識と社内人脈のみ。結果的には、バブル世代が組織にしがみついてしまうのは仕方がない。

田中さん「若いころは組織自体をぶち壊すことを望んでいたのに、気が付けば、自分が年功序列や終身雇用に寄りかかる存在。これがバブルに働いた世代の悲劇ですね

若年層が半沢を支持するワケ

半沢直樹は、40代や50代だけでなく、実は若年層に支持されている。それはなぜなのか?

田中さん「香川照之が演じている大和田常務は、私たちと同じ世代ですが、彼は勝ち組ですね。それが、悪役であるというのが素晴らしい。面白いと思いますね。バブル世代には、半沢は視聴者自らが言いたいと思っても言えなく、できなかった昔の想いを体現してくれる英雄なんです。逆に、大和田常務は、自らの中にある狡さなどを映している、分身といえると思いますね

若年層にも『半沢直樹』が人気ということで、学生たちにも広く視聴されているという。Web上でオリジナルコンテンツを数多く視聴している彼らにとっては、テレビドラマを観るという機会が皆無だ。しかし、彼らのお眼鏡に適った『半沢直樹』の今シリーズは、IT企業の買収工作が出てくるなど若年層の興味をそそっているようだ。

それはなぜか?

それは、重層的な構造を表現した人間描写にリアリティを感じ、昨今のコロナ感染症に就職活動を邪魔され、デジタル化の波に直面する《コロナ世代》の若い学生を惹きつけているということである。

半沢直樹という現代のヒーローと、賀来賢人演じる森山に自分の姿を投影して「不正は絶対に許さない」「お客様のために」「仲間を守りたい」という正義を共有することで、このコロナ感染症の鬱屈した日々に、一服の《爽快感》を得ているのではないだろうか。

(C)写真AC (C)TBS

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