PIDE厳選!NEOYAGが読むべき日本の作家が描く傑作大人の恋愛小説7作品!
ジェーン・オースティン著『高慢と偏見』やスタンダール著の『赤と黒』、エミリー・ブロンテが書いた『嵐が丘』などを古典とした純文学のような、通俗的ロマンスのような小説のことを、恋愛小説と定義します。
若者たちのありきたりな恋愛体験や起こった事件をメインのテーマにした小説、超がつくほど、純愛というものを強めに押し出した空想的な物語であったりすることが多い恋愛小説。
ヤングアダルトやジュブナイルの作品も多く、非常にありきたりなパターンに準じていたり、わかってしまう結末に終わることが多いので、恋愛小説というと、なんとなく安っぽいイメージを含んでいることがあります。
しかし、大人の恋愛観というものは、それらとは違い、非常に複雑に入り組んだ感情と、絡みついた愛情表現が織りなす珠玉の作品というものも多いわけです。
今回は、私、NEOYAG編集長・丸野裕行がオススメするNEOYAGが読むべき国内作品の大人の恋愛小説を7作品ご紹介したいと思います。
大人の恋愛とはなんなのか
陳腐な感じでいえば、《大人のメロドラマ》的な揶揄を含んでいることもあるのですが、恋愛ものというのは、十分それでいいと思います。
その人の琴線に触れるか触れないかは、その人次第ではありますし、ある人には傑作でも、ある人には駄作という判断になるのが、恋愛ものなんですね。
最後は、病気で死んでしまう、一緒にいたいのに離れ離れにならなければならなくなる、幽霊になって恋人に会いにくるetc……ある人には価値があるでしょうが、ある人にはまったく価値がない世界観です。
だから、価値は人それぞれ。陳腐だな、と笑ってしまう恋愛小説というのも非常に多いわけです。
しかし、丸野裕行が選ぶかぎりは、そのあたりを排した若干骨太の恋愛小説というものをご紹介したいと思います。
NEOYAGが男泣きする傑作恋愛小説4選
娼年(石田衣良著)
<ストーリー>
セックスというのは何者かを受け入れ、何者かに受け入れられることー。
ハタチの大学生のリョウは、バーテンダー。知り合ったのは、40がらみの御堂静香という美女。静香はリョウに興味を持つが、リョウはまったく女に興味を示すことがない。
静香は「セックスや女性がつまらないのは問題」と言い、後日「あなたに値段をつけてあげる」と言い、若い咲良という女を連れてくる。
リョウは夢中で咲良を抱くが、静香は「合格」を言い渡し、自分のメンズクラブで働くように誘う。彼女のクラブは、男性を女性が買う場所。躊躇っていたリョウだったが、退屈な世界から脱出するために、静香の誘いを受け、「娼夫」になるのだった。
ここがオススメのポイント!
過去を持たない、まだまだ未熟な少年が女の性と情念と対峙し合うことで、様々な感情を湧きあがらせて、大人の男になっていくさまが濃密に描かれていきます。
これが、やはり問題提起派の石田衣良渾身の恋愛小説と言っても過言ではありません。
夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦著)
<ストーリー>
大学に通ってくる後輩「黒髪の乙女」に恋をする先輩は、乙女を追いかけ、京都の夜の街を彷徨い歩く。だが、ズボンを追いはぎに盗まれたり、酔っ払いに大酒を飲まされて泥酔したり、窮地の乙女を救うなどとは程遠い、すれ違ってばかり。まったく彼女には気がついてなどもらえません。
黒髪の乙女はそのころ、破産しかけの中年エロオヤジや他人の宴会に勝手に参加してタダ酒を飲みまくる怪しい男女と一緒に飲み歩きます。
節操がない女に見えますか? いえ、どこまていっても彼女は乙女です。
決して人を疑うこともなく、他人様の借金をなくすために金融屋の李白という謎の老人とニセ電気ブランという酒の飲み比べにチャレンジするような心意気。まさに真善美の乙女でした。
ここがオススメのポイント!
放ってはおけない、どこまでもひたむきでまっすぐな乙女を追ううちに先輩が、彼女と共にあっと驚くような奇妙な出来事に巻き込まれていきます。
少しばかりアクの強いキャラばかりが登場するのが、大人気作家・森見登美彦の世界観。自分まで夜の京の街へ繰り出しているような感覚に陥る……そんなエッジの効いた流麗な文章が素晴らしい恋愛小説です。
ふがいない僕は空を見た(窪 美澄著)
<ストーリー>
R-18文学賞受賞の大人向けの恋愛小説がこれ。
短編5つで構成される本作は、山本周五郎賞受賞、短編のうちのひとつがR-18文学賞大賞受賞で注目された小説集です。
『ミクマリ』の主人公は、普通の高校生。しかし、専業主婦であるあんずと不倫中。学校帰りにあんずが暮らしているマンションで、アニキャラのコスプレセックスを楽しみますが、クラスメイトの女子から告白され、あんずに別れを告げる。
しかし、ある日ベビー用品売り場でベビー服を選ぶあんずを見かけ、彼女のことが頭から離れなくなり……。
ここがオススメのポイント!
激しい性描写には驚きますが、ストーリー展開からはどんどんと目が離せなくなるという奥の深い小説です。
章を追うごとに、胸が痛み、切実な問題が頭をもたれるような展開になっています。
登場人物の温かな優しさにふれ、涙してしまうような爽やかな気分になれる珠玉の物語が詰まっていて、ぜひ読んでください。
蝉しぐれ (藤沢周平著)
<ストーリー>
文四郎とふくは3歳の年の差があっても、隣家同士の幼馴染。蛇にふくが噛まれ、その毒を文四郎が吸い出すところからストーリーははじまります。
幼子の頃は話し、共に祭囃子を聞いたふたりが、自分の淡い恋心に気づいてしまう前に、藩の事件がふたりの歩む道を遠く離してしまう……。
ここがオススメのポイント!
世継ぎ問題で切腹させられた文四郎の父。罪人の子になってしまった文四郎の父の無実を信じながら、誇り高く毎日を生きていく姿。ふくは幕府の殿の側室になってしまい、言葉すら交わせない遠い存在に……。
二十数年を経たときに再会したふたり……お互いの想いを確かめ、やはり別れる。その歯がゆさ。
美しき当時の情景描写、時代も翻弄される人生でさえ、すべて受け止めて、自ら進むべき道を歩む清々しさに勇気をもらえます。
NEOYAGが男泣きする傑作恋愛小説残り3選
抱擁―北方謙三恋愛小説集(北方謙三著)
<ストーリー>
葬儀に行った帰りに、教会を一歩出た私。そのとき、見知らぬ婦人が声をかけてきた。それが小林悦子。私が高校時代に一度交際した女生徒の友達だったという。
当時、バレンタインカードをくれたこともあったという彼女。私にも女性と知り合うためだけに情熱を注ぐという時期があったのだ。
ひと月経ったあと、私は彼女を食事に誘ったのだが……。
ここがオススメのポイント!
表題作「抱擁」をはじめとした、ハードボイルド作家・北方謙三が紡ぎ出した男女の愛のカタチを問う八篇の短編集。
彼の一人称の語り口に、なんとも言えない男女の大人の哀愁が秘めた名言の数々が蘇る。恋をまだあきらめてはいない中高年世代が思わず涙する心に沁みる短編の数々はすべて絶品。単行本未収録のエッセイ「女たちよ。」までも収録してあります。
新宿鮫(大沢在昌著)
<ストーリー>
新宿署の刑事・鮫島は、“新宿鮫”という異名を持って恐れられている存在。
相棒もなく、ただ独り捜査に出向く。相棒になりたがるやつはいない。それは鮫島の捜査が強引だからなのです。
命すら張らなければならないような現場で、音もなく犯罪者に食らいつくという彼の姿。
ある日、歌舞伎町を中心に警官が連続して射殺されてしまう。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追うというノンストップバイオレンス。
突き止めた密造銃工房には、鮫島の想像を絶する巧妙な罠が待ち受けていました!
ここがオススメのポイント!
しかし、そこの絡む恋人の存在がシリーズをしっかりとした恋愛小説に仕立て上げています。
鮫島の絶体絶命の危機を救うのは…というところにポイントが! 直木賞も受賞した超人気シリーズの輝ける第一作、ぜひ恋愛小説として読んでみてください。
愛の領分(藤田宜永著)
<ストーリー>
信州上田で愛情劇が繰り広げられる!
主人公で仕立て屋稼業を営んでいる宮武淳蔵は、昔からの親友・高瀬の誘いで、久しぶりに信州上田を訪れます。
上田へ出向くことを躊躇っていた淳蔵、それはなぜなのか……。昔好きだった女性・美保子がいるからなのです。
そんないい年の重ね方をしたふたりを取り巻く愛の物語になります。
ここがオススメのポイント!
自分が好きだった女が親友の妻になっているという状況下で、淳蔵と病気を患った美保子は昔の気持ちに引き戻されていきます。
大人の関係というのを、淳蔵だけではなく、周囲の男女もなんとなく築いているところが、信州の田舎である上田の閉鎖的空間がよく融合しているといえるでしょうか。
はたして、愛の領分とはいったいどのようなものなのか……その真相と結末は最後に明かされます。ぜひお読みください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
まだまだコロナ禍の今、不要不急の外出を控えたいなら、
久しぶりに、NEOYAGらしく大人の男女の恋愛小説に浸って、心穏やかに、人を愛することに磨きをかけてみましょう。
(C)Amazon
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