<編集長・男の映画レビュー>『ウォータームーン』&『いつかギラギラする日』
『ウォータームーン』(’89/配給:東映)
これはエンターテイメント系の映画として観てはいけない。宗教映画として観た方がいい。
長渕剛の解釈で、仏心というものを描いているので“男、長渕を観る!”って感じでとりかかっちゃうと、大火傷必至。
超難解で、初めは何の話なのかまったく分からない
ストーリーとしては非常に難解で、1956年長野県X地点に謎の光が天空より降りる。
マスコミは謎の未確認物体と報じたのだが、政府調査隊は巨大な隕石の落下とだけ発表。
そして時は経ち、43年後の1989年。ある山寺、禅修行に励む長渕剛演じる竜雲の体に、異変が起こりはじめる。
そんな時になぜか竜雲は東京に出た。その理由は、竜雲は人間的感情などを喪失してしまった都会に“人間らしい人間”を探しに出たのだった。
時を同じくして、国家公安部調査官が行方をくらませた竜雲を追っていた。
仏を信仰する長渕の気合
と、まあ実によくわからない話なのだが、竜雲は異星から来た宇宙人で、血の色が緑って感じ。
でもなんだか、途中ぐらいから『とんぼ』や『オルゴール』とは違う長渕の精神世界が垣間見える。

いつもの長渕スタイル
『ウォータームーン』という映画がこの世に生み出された意義を知りたいなら、中村勘太郎主演、高橋伴明監督作品の『禅-ZEN-』を鑑賞すべし。
禅宗の創始者・道元の人生を描いたものだが、肩の凝らないつくりになっている。長渕が言いたいことがわかる。
僕も寺の坊主の孫なのだが、感覚的に何か感じる。
撮影現場は、男長渕のこだわりで混乱
男長渕剛のこだわりの強さから、結果的によくわからない映画になってしまったのは、巨匠・工藤栄一監督に口出ししすぎたため。
監督もノリがいいから、山を延々歩いている映像を撮らされたり、過酷な撮影現場に嫌気がさして降板を申し出た松坂慶子をなだめたり、とにかく引っ掻き回されるわけ。
おかげで、丸山昇一の脚本もばっさばっさ切られ、よくわからないシーンのオンパレードに……。
製作サイドとしては、長渕映画が興行的に当たるもんだから、口出しもしないし……。
なぜ今回の映画が、盟友の黒土三男監督にならなかったのかも、色々と理由があるようで……。
でも、俺はこの映画、意外に好きです。公開時も観に行ったし。
採点:★★★☆☆
作品データ
製作年 | 1989年 |
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製作国 | 日本 |
配給 | 東映 |
上映時間 | 115分 |
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提供:株式会社キネマ旬報社
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『いつかギラギラする日』(’92/配給:松竹)

「頭蓋骨まで熱くなる」「当分のあいだ、ビデオには致しません」というCMキャッチが印象的だった本作『いつかギラギラする日』は大傑作である!
大河ドラマを降板し、病床に伏していた萩原健一に、深作欣二監督は5冊の台本を渡し、「病気が治ったら、一本やろう」と告げた。
ショーケンが選んだのは、釜ヶ崎の暴動を映画化した台本だったが、監督が選んだのは、中年男と若者が徹底的にやりあうピカレスクロマン。
それがこの『いつかギラギラする日』である。
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ストーリーは『暴走パニック大激突』似
ストーリーは、銀行強盗を繰り返す中年ギャング一味が、木村一八演じる角町に誘われ、北海道のホテルの売り上げ2億円強奪を実行する。
襲撃に成功した4人が強奪した金を数えると、5,000万円しかない。ライブハウスをオープンする金を地元のヤクザから借りている角町は、その場で一人を射殺。アジトを爆破して、強奪金のすべてを持ち逃げした。
それを追うショーケン演じる神崎。角町は中年ギャングのひとりの情婦である麻衣と手を組み、彼らの死闘がはじまる。
当初の予算は3億円、それが11億に化けた
製作者である奥山一由が用意したのは3億円だったが、結局派手にぶつける車両だの買取り、何度も行われる爆破シーンなどで、製作費は膨らみに膨らんで、11億円に……。興行収入は、4.3億円とふるわなかったが、最終的に邦画史に残る傑作になった。
若手のホープ・木村一八をはじめ、暴力的なヒロインに荻野目慶子、ベテランの千葉真一や石橋蓮司、樹木希林、多岐川裕美が揃い、アクション映画でありながら、演技合戦を見せてくれる。
当時のガンアクション史に残る派手さ
邦画界では唯一となった拳銃特殊効果のプロ・BIGSHOTが、すべての劇中銃を用意。コルトガバメント、ベレッタ、ウージー、コルトパイソン、ショットガンなど、本当に何発撃つのってくらいの弾丸を発射。シルバー世代の深作欣二監督が、歳を感じさせないほどの演出っぷりで、スクリーン狭しと演者全員を縦横無尽に暴れさせる。
日産テラノとポンテアックのカーチェイスシーン、観光バスを押し倒し、それでもショーケン演じる神崎と角町、麻衣の暴走は止まらない。
ショーケンと原田芳雄が魅了された殺し屋役
当初、主役だったショーケンが主役を降りて、これをやりたいと言い出したのは、原田芳雄が演じたシャブ中の殺し屋役。
八名信夫が組長の弱小ヤクザに雇われている、何度撃たれても立ち上がるゾンビのような殺し屋はいい味をだしていた。
さらに意外にいい味を出しているのが、靴屋兼武器屋を演じた安岡力也。神崎とはどんなヤマを一緒に踏み、どのような仲なのか、めちゃくちゃ気になるので、アナザーストーリーをやってほしいくらいだ。
ということで、筆舌に尽くしがたいこの映画。間違いない超傑作なので、ぜひ観てほしい!
採点:★★★★★
スタッフ
製作年 | 1992年 |
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製作国 | 日本 |
配給 | 松竹 |
上映時間 | 108分 |
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提供:株式会社キネマ旬報社
いかがでしたか、男の映画2本立て!
どちらも勢いだけで突っ走る映画でした!
今後も最強の“漢”の映画をレビューしていきたいともいます!
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